扉を開けたらそこは別世界でした! ・・・なんてことはなく、そこには金髪で特徴的な髪型の人物が座っておられたのでした。

・・・ってWhy?

「えーと、どちら、さまで?」
「あー・・・怪しいもんじゃねェ、よい?」
「疑問形乙!」

ああいやそんな呑気に突っ込んでる場合じゃない。私は扉を開けてドアノブに手をかけた格好のままに固まっていた。一体全体どうゆうこった。なにがどうしてこうなった?言っておくが私は一人暮らしなので、同棲中のステキな彼氏なんぞおりゃしません。じゃあなんで私の家の玄関にこの人は座っていらっしゃるのでしょうか。ちっちっちっとありがちな効果音が脳内に流れて3秒後、ちーんと閃くように私は考えたくない答えに辿り着いた。

「どど泥棒! けけ警察呼ぶぅうう!」
「いやーちょっと待てよい、たぶんそりゃ困る」

言うが早いか勢いよく扉を閉めようとして、けれどそれは叶わなかった。私の扉を閉める勢いよりも圧倒的な速さと勢いで金髪の泥棒さん(仮称)が足でその扉を押さえ、私のドアノブにかかっていなかった方の、荷物を持っていた腕を掴んだからだ。ああこりゃあ終わったな、といっそ晴れやかなまでに瞬時で悟った私の諦めは早かった。

「すいません殺さないでください」
「・・・いやぁ、だから・・・まァいい、そんなことはしねェよい」
「・・・えっ?」

泥棒にしては随分と落ち着いた様子に、必死に伏せていた顔を上げて、涙目ながらに彼を見上げる。すると彼は居心地が悪そうに目線をそらし、そして言い難そうに「話が聞きたいんだよい」と呟く。え、なに? はなし?

「なん、のですっ、か?」
「いや・・・悪かったよい、何もしねェ、これは本当だよい」

思わず震えた涙声で聞き返したが、それに彼は困ったような反応を示して、少しだけ玄関のほうに私の体を引いた。けれどそれに反射的に外へ抗えば、彼はますます困ったように、少し力強く掴んでいた手から完全に力を抜いた。そしてそれにどうしたのかと一瞬体を強張らせたが、しかしその手は次にはもう私の涙を拭っていた。・・・え?ちょっと待ってごめん、話が全く見えない。それでも驚きと恐怖と、そしてそこから殺されないらしいわずかな希望に安堵したせいで、私の涙はとめどなく溢れていた。そしてその事態に彼はやっぱり確実に困っていて。どうゆうこと? え、なに。泥棒じゃないの?

「言っとくが、俺は泥棒じゃねェよい」
「・・・泥棒じゃ、ない・・・?」

私の様子を察したように言い切った彼だったが「・・・まぁ考えようによっちゃあ同じなのかねい」と小さく呟いていたので、それ聞かなかったことにして、だけど私は交渉ができるらしいことに歓喜していた。私は死なずにすむのか!

「じゃ、じゃあなんなんですか」
「・・・そう、だな」

彼はやはり非常に言い難そうに、首の後ろを掻いていた。けれどその様子に私は少しだけ警戒を解いていた。だって本当に泥棒だったらたぶんこの時点でやられてる。というかさっさと私を押しのけて逃げ出していただろう。だから本当に泥棒ではないのかもしれない。と思い至った私は案外冷静に思考できていのか、否か。

「名前・・・名前を、」
「あ? あァ悪いねい、俺はマルコだ。お前ェさんは?」
「・・・、です」

もしやっぱり不審者だったら、と思って躊躇ったのだが、素直に返ってきた返答に思わずこちらも答えてしまった。しかし相も変わらず言いあぐねている彼に、私は痺れを切らして、というか息が詰まってどうにかなりそうだったから話しかけてみる。

「泥棒じゃ、ないんですよね?」
「あぁ」
「殺す、気も?」
「ねェよい」
「話を・・・」
「・・・聞きたいし、そうだな・・・聞いても欲しい、よい」
「・・・え?」

本当は逃げ出して、助けを求めたほうが良かったのかもしれない。でも、彼の真っ直ぐで真剣な瞳に、それでも表情は困ったように情けなくなって。それに絆されて足を踏み出してしまった私には、選択肢なんて、やっぱり残ってなかったのかもしれない。


けれどそれはおよそ運命の出会いと言うには、
あまりにかけ離れているような。



運命と言うにはあまりに最悪な。

ということでちょっとマルコさんに対する情熱が抑えきれなかったので←

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